HJホールディングス株式会社 代表取締役社長 髙谷和男

常に客観的な部分と情熱的な部分を併せ持つこと

HJホールディングス株式会社 代表取締役社長 髙谷和男 (たかやかずお)

■プロフィール

早稲田大学政治経済学部卒後、1994年日本テレビ放送網(株)に入社。番組制作部門に配属され、音楽番組やクイズ番組に従事。2009年、戦略部門である編成局編成部に異動。2012年に再び制作部門へ。2015年にHJホールディングスに出向。

2019年に帰任し、編成部やデジタル戦略を司るICT戦略本部を経て、2022年6月よりHJホ―ルディングス株式会社代表取締役社長。

動画配信サービスHulu(フール―)を運営しているHJホールディングス株式会社。さまざまなジャンルの作品が充実していて、今では100,000本以上のコンテンツを配信している。そんなHJホールディングス株式会社の髙谷社長に、仕事をする上で大切にしているマインドや理想とする人物像など幅広くお話を伺った。

■好きなことを仕事にしたいと思って、エンタメ業界へ

学生時代はキラキラした音楽番組が好きで漠然とそういったエンターテインメントの仕事が楽しそうだと思っていました。バイトやサークルにしても仲のいいコミュニティに属している時間はあっという間で、楽しくて没頭できますよね。同様に、プライベートでテレビや映画を見ているときもノーストレスで楽しめていたので、エンタメに関わる仕事、好きなことを仕事にしたいと思うようになりました。そのため、就職活動では、エンタメ業界のテレビやラジオ、代理店を中心に受けて、内定をいただいた日本テレビに入社しました。

■大変だったエンタメの世界

入社後は番組制作やタイムテーブルの戦略を立てる編成部などの仕事に携わりました。実際にエンタメの仕事をすることで、完成品を世の中に届けるまでの苦労を改めて感じました。今でこそ労働環境は見直されていますが、テレビ局で働いているときは、当たり前のように何日も帰れない日が続きました。

当時の仕事を振り返ると、すごく大変でしたね。ただ、「嫌」という気持ちはなく、プライドや反骨心で仕事を乗り越えてきました。また、大きなモチベーションとなったのは「こういう番組をやりたい」「こういう仕事をしたい」と達成した未来を思い浮かべること。その想いがあってこそ、今辛くてもやり遂げることができました。

目の前に何かつらいことがあると、右往左往して、誰しも悩むと思います。しかし、それは仕方がないことです。だからこそ割り切って、とにかく次を考えるということの繰り返しでした。元はエンタメが好きで入った業界ですが、「好き」という気持ちだけではやっていけないこともあります。その際大事なのは、情熱的な部分に加えて客観的な冷静さを併せ持つことです。好きだけだと独りよがりになってしまうため、「情熱と理」を常に考えることを意識してきました。こういった考え方は視聴率などの数字に向き合う仕事に携わる中で、より強くなったと思います。

■社長という立場になって変わったこと

社長になってからは、個人の目標よりも、会社全体のことを考えるようになりました。若いころは「自分の番組さえ面白ければいい」と思っていたのですが、いまはステークホルダーのことまで考えなければなりません。
仕事で壁にぶつかったときも、昔から壁を「乗り越え」ず、「すり抜ける」タイプだったので、壁を壁だと感じていないことが多いですね。「どうしてもこうじゃなきゃダメだ」と若いうちは思いがちですが、そんなことはありません。たとえばプロ野球の日本シリーズにしても、7戦中3回は負けてもいいんです。でも、それに気が付かず、「全部勝たなくてはダメだ」と思ってしまう人が多いです。勝ちたいと思うことは誰しもあるでしょうが、負け試合もあって当然です。どれだけ負けても、最終的に目的に辿り着ければ問題ありません。方法を変えて進み方をずらしたことでうまくいくこともたくさんあります。ですから、自分が目指す目的地に達するには、様々なプロセスがあるという事をぜひ知ってほしいですね。

■Huluであることの意味

一昔前まで存在もしなかった動画配信サービスですが、今では新しくもなんともありません。NetflixやAmazonプライム など他にもサービスはたくさんあります。それらとHuluの違いとしては、総合的に幅広いジャンルを網羅している一方で、オーディションやテレビ、連続ドラマなどのファンコンテンツが充実していることが挙げられます。しかし、一番重要なことは「どこのコンテンツであるか」というよりも、ふとした瞬間に作品を見て、「気づいたらストレスなく時間を過ごせていた」という事実です。そして、見終わった際、それがHuluで配信されていたことに意味があると思います。

今の時代は「エクスペリエンス」という言葉が注目され、どういう感情を持ちながら、顧客がそのサービスやモノを使っているかが重要になります。だからこそ、今後も顧客との関係性が課題になりますし、関係性を考慮しないプロダクトは伸びないと思っています。

■どんな人と一緒に働きたいか

一緒に働きたい人物像としては、誇りと責任感を持っている人です。ここでいう「誇り」とは自分はその問題に対してどう思うか、きちんと意見を持つことです。そして、その疑問を疑問で終わらせずにアクションに乗せることが「責任感」だと思います。チームでやることは個々の仕事の集合体だからこそ、どう具現化させるかで事業のスピード感が変わってくるはずです。

■大学生へのメッセージ

人生は「○○しておけば良かった」と思うことの連続です。私の場合は、学生時代にもっとしっかり勉強をしておけばよかったと思っています。インプットの機能はどんどん衰えてしまうので、とにかくがむしゃらに貪欲に学生時代のうちからインプットしておくことをおすすめします。

また、学生は時間に余裕があるからこそ、バイトでもサークルでも人間関係は大事にしたほうが良いと思います。友達が多い分だけ人生のバリエーションが増えるため、色々な友達と交流を持っておくと良いと思いますし、一度学生時代に仲良くなった友達は10年会わなくても、10年後に会えばすぐ当時の関係性に戻れます。そういう人間関係は社会に出てから、仕事の人脈や癒しになるので、学生時代のうちから友達付き合いは積極的に構築しておくと、後々かけがえのない財産になります。 さらに言えば、今は効率重視で考えがちですが、お店に商品がくるまでの物流に思いを馳せることができると人に優しくなれます。若い人は若い人なりのバリューチェーンの視点で物事を見ることができると、ビジネスのチャンスが広がっていきます。日頃から、目の前の商品ではなく、商品の向こう側にいる人を常に考える癖をつけることで、人生はより広がっていくのではないでしょうか。

学生新聞オンライン2022年9月12日取材 日本大学 3年 石田耕司

立教大学4年 須藤覚斗 / 津田塾大学4年 宮田紋子 / 成蹊大学4年 岡田美波 /國學院大學3年 島田大輝 / 日本大学3年 石田耕司

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