公益財団法人ソニー音楽財団 理事長 水野道訓
音楽を届ける原動力は、人が感動する姿が好きだから。
公益財団法人ソニー音楽財団 理事長 水野道訓 (みずのみちのり)
■プロフィール
1981年、早稲田大学教育学部卒業後、(株)CBS・ソニー<現・(株)ソニー・ミュージックエンタテインメント>入社、キャラクター部門に配属。ソニーミュージックグループのキャラクターおよびソリューション事業会社の代表を経て、2015年(株)ソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役CEOに就任。退任後2020年より現職、公益財団法人ソニー音楽財団理事長。
上質な音楽を通して子どもたちへ格差なく教育を届けたい、若い世代の音楽家が活躍できる場を作り応援したい、との強い想いを持つ公益財団法人ソニー音楽財団の理事長の水野道訓さん。子ども達を中心にクラシックを通してもっと音楽の魅力を届けたいと水野さんは語る。
■ソニー・ミュージックエンタテインメントと共に歩んできた人生
私は早稲田大学教育学部在学中よりマスコミ業界で働きたいという思いが強くなっていました。当時70年代カルチャーが凄まじく変化しており、情報誌等新たな雑誌がどんどん創刊されていました。その刺激を受け大学2年の時に友人と学内学生向けの情報誌を立ち上げて、1ヶ月で1000部を売り切るほど人気を呼びました。この雑誌は40年以上経った今も存続しています。一方子どもの頃からピアノをやっており、音楽が好きでバンドを組んだり、日本舞踊にも取り組んだりしていました。
就職活動では当初、放送業界が第一志望でしたが、最終的には当時から音楽だけでなく出版など様々な事業を手掛けていたCBS・ソニー(現ソニー・ミュージックエンタテインメント)に就職しました。最初の配属先はソニー・クリエイティブプロダクツというキャラクター事業を展開しているグループ会社で、当初は希望と違う業種を不服に思っていましたが、キャラクタービジネスに関わっていく中で、「可愛い!」と感動してイベントやショップで盛り上がってくださるるお客様に触れ、とてもやりがいを感じ、ついにはこの会社の代表になりました。
その後ソニー・ミュージックコミュニケーションズ(現ソニー・ミュージックソリューションズ)というまた別のグループ会社に代表として異動しました。この会社は、CDの製造、コンサートグッズの制作・販売、ライブイベントの制作などエンタメ全般のソリューション事業を展開している会社です。ソニーミュージックグループの中でも最も在籍人数の多い会社で、先輩・後輩を問わず、様々な専門職種のスタッフを10年に渡ってマネジメントしました。この経験を経たことが、2015年に本社、ソニー・ミュージックエンタテインメントの代表取締役CEO就任に繋がったのだと思っています。CEO時代には音楽のヒットは勿論ですが、アーティストマネジメントを拡充し、アニメから派生してモバイルゲームの大ヒットを生み、キャラクターやソリューションビジネスも幅広く展開するなど、グループの様々な事業の拡大に成功しました。感動を生み出し届けたいと、頑張ってくれたスタッフに大変感謝しています。その後、2020年に代表を退き、現在は公益財団法人ソニー音楽財団の理事長を務めています。
■「公益財団法人ソニー音楽財団」について
私たちは4つのテーマで活動を行っています。
①子ども達への良質な音楽の提供
②誰もが気軽にクラシック音楽を楽しめる環境づくり
③若いアーティストの育成・支援
④子どもへの音楽を通した教育活動に対する助成
①子ども達への良質な音楽の提供
未就学児でも本格的な演奏に触れられるよう「Concert for KIDS」を全国各地で開催しています。また、小学生~高校生を対象とした、クラシックコンサートをリーズナブルに体験できる「Dream Seats 」というプログラムがあります。昨年5月のゴールデンウィークには、サントリー芸術財団と共催で「こども音楽フェスティバル」という4日間のクラシックフェスを開催し、約3万人もの方が足を運んでくださり、配信は約10万人視聴とクラシック界では異例の動員数となりました。
②誰もが気軽にクラシックを楽しめる環境づくり
クラシックはどうしても敷居が高いといわれ、コンサートに来る方が限られています。実際はジャンルに明確な定義は無く、ビートルズも何十年後かにはクラシックと言われているかもしれません。このクラシックのハードルを少しでも低くして質の高い音楽をより多くの方に気軽に聴いていただけるよう、「日本赤十字社 献血チャリティ・コンサート 」や撮影・SNS・おしゃべりOKという自由度の高い「That’s クラシック!」を開催しています。
③若いアーティストの育成・支援
将来有望な指揮者とチェリストを選考して顕彰する「齋藤秀雄メモリアル基金賞」やオーケストラで重要な楽器であるオーボエ奏者を世界から発見・育成するための「国際オーボエコンクール 」などを主催しています。また、登録アーティストを募り財団の音楽活動に参加してもらうことで、若手アーティストに活躍の場を提供しています。
④子どもへの音楽を通した教育活動
地域や環境、経済状況による格差などで音楽に触れる機会が少ない、また楽器に興味があっても習えない子ども達が大勢います。そこで音楽を通して教育活動を行っている全国の様々な団体を支援するために「ソニー音楽財団 子ども音楽基金」を創設しました。また、子どもたちが楽しみながらクラシック音楽に親しめるよう「子ども音楽新聞」を全国の小中学校向けに定期発行をしたり、「子育てクラシックナビ」というアプリで、情報提供や動画・ゲームなどの配信を行ったりもしています。
コロナ禍においては、「ソニー音楽財団 新型コロナウイルス対策特別支援プロジェクト」を立ち上げ、『子ども向けクラシック音楽動画』を募集・制作することによって表現の機会を失った若手演奏家を支援するのと同時に、同動画を公式YouTubeチャンネルにて無料公開することで、子どもたちが音楽に触れられる機会を創出してまいりました。
■大学生へのメッセージ
今までのエンタテインメントビジネスを通じて私が一緒に働きたい人は、「感動を届けたいという気持ちの強い人」です。自分が携わったものに、心動かされた方がいたらとても嬉しく思います。「ヒット」を創り送り出すということは、人々に感動を届けることだと思います。エンタメの根源は人々を楽しませることです。それにはまず自分自身が楽しめることが大切です。誰かを楽しませよう、喜んでもらおうと感動を届けることに強い想いがある人と出会いたいですね。
また、学生の皆さんには日頃の生活の中で社会問題に意識を向けていただきたいと思います。何か一つでも問題だと思うことに向き合い、心に留めてください。今後、私自身も後進や若い世代、子ども達を応援することに力を注ぎたいと思っています。人間は決して一人では生きていけません。だからこそ人との繋がりを大事にしてほしいと学生の皆さんに伝えたいと思います。
学生新聞オンライン2023年2月17日取材 国立音楽大学 2年 岡部満里阿
2023年秋、5年ぶりに東京で開催
「第13回 国際オーボエコンクール・東京」
公式ウェブサイトにて随時情報更新中
https://oboec.jp/
[日程]
◆第1次予選:8月 ※動画による審査(公開)
◆第2次予選:10月3日(火)、5日(木)、6日(金)
◆本選および表彰式:10月8日(日)
◆入賞者&審査委員コンサート:10月9日(月・祝)
[会場]
武蔵野市民文化会館(東京都武蔵野市) ※第2次予選以降
主催:公益財団法人ソニー音楽財団(Sony Music Foundation)
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