株式会社USEN 代表取締役社長 貴舩靖彦

店舗DXを推進することで人にしかできないことを。

株式会社USEN 代表取締役社長 貴舩靖彦(きふねやすひこ)

■プロフィール

1995年に株式会社大阪有線放送社(のちのUSEN)に営業職で入社し、その後、支店長・支社長・営業企画部長を経て、2012年に海外事業立ち上げで上海に駐在。2016年に日本へ帰国後、事業推進統括部長・営業本部長・執行役員・取締役を歴任し、2023年9月に株式会社USEN 代表取締役社長に就任。

創業より60年以上、店舗向けにBGMを届ける音楽配信サービスで国内シェアNo.1※を誇るUSEN(USEN-NEXT GROUP)。BGMだけでなく、開業支援から運営サポートまで総合的なサービスを展開。店舗の持つ真の価値創出の実現を目指すUSENはどのような戦略や思いで事業を展開しているのか。代表取締役社長である貴舩靖彦氏にお話を伺った。

※2023年8月期 統合報告書より
https://usen-next.co.jp/ir/integrated_report.html

高校ではゴルフ部に所属しており、ゴルフ中心の高校生活を過ごしていました。周りは進学する中で、大学に行って勉強をするのではなく、プロゴルファーになるために研修生となり、夢を追いかけていました。ゴルフは個人戦です。自分自身の技量を上げるだけでなく、どうマインドを変えていくかが大切であり、当時培った経験は今でも活きています。
その後、就職を選択したのですが、人とのコミュニケーションが苦手だったため、自分を変えたいという思いが強くありました。そこで、苦手を克服するために営業ができる会社を志望することにしました。営業はどの会社にもありますが、音楽が好きだった私は、音楽に携わる仕事がしたいと思うようになりました。そして、あらゆる店舗で音楽配信サービスが使われているUSENに入社することを決めました。

■コミュニケーション下手を克服したい想いから重ねた、お客様との対話

営業配属後、なるべく多くのお客様と話すことを心掛けました。話す際に意識したことは、お客様の店舗状況を理解して最適なサービスを提案できるかです。その後、USENでは営業職だけでなく、様々な職種、事業、企画などを担当しました。特に今に活きていると思うのが、海外での営業経験です。上海に駐在して音楽配信事業のスタートアップの投資に携わったのですが、その際、中小企業のCOOとして参画して初めて、会社のすべての部門が一つにつながっていることに気づきました。そこで経営の思考を学んだことが、今の仕事につながっています。当時は慣れない海外でしたが、海外にも音楽配信事業を広げるという使命が自分を突き動かしてくれましたね。社長になった今では、様々な事業に携わったことで見える角度も変わり、多くの経験が仕事に活きていると思います。

■店舗DXによってお店の未来を創造する

USENは人出不足と業務効率の改善につながるサービスを提供することで、空き時間を店舗の未来に向けた有益な時間に使ってほしいという思いで事業を展開しています。店舗運営の場合、効率化されることで、その時間をオーダー促進、メニュー説明といった本来の接客業務に専念できます。その結果、業務効率の改善だけでなく店舗に集う人が笑顔になれる空間創り、すなわち店舗の持つ真の価値創出の実現につながると考えています。
そのために力を入れているのが、店舗に必要なサービスのプロダクト開発です。今までは音楽配信サービスが中心でしたが、現在は開業支援、開店準備、販売促進、運営サポートといった店舗のあらゆる課題に対応する総合的なサービスをサブスクリプションで展開しています。サブスクリプションはお客様の信頼を失ってしまうとすぐに解約につながってしまう可能性があります。そのため、どのサービスでもすぐにメンテナンスサポートができるよう全国に約1,000名のフィールドエンジニアを約135拠点に配備し、いつでも保障や修理、24時間体制のサポートを維持しています。
また、自社でプロダクトを開発しているからこそ、お客様の声を聞きながら開発できるというメリットもあります。一つのサービスだけだと差別化が難しいのですが、複数のサービスをパッケージで提案することで業務ごとのアフターケアを一元化できるので、お客様も「USENに頼めば大丈夫」と考えていただけます。

■目標は400万店舗以上への導入と各サービスのNo.1

そのほか、グループ会社25社と連携して、様々な業界、店舗にサービスが届くようにと意識しています。現在は約82万店舗にサービスを導入していますが、いずれは400万店舗以上に導入したいと思っています。そのためにも弊社のリソースだけでなく、協力会社を増やしアプローチできていない店舗に展開することで、新たなニーズを獲得したいと思っています。
音楽配信サービスでは国内シェアNo.1を取れていますが、POSレジなどの部門ごとではNo.1を取れていないので、部門ごとのサービスでNo.1を取ることで、シェアを拡大できると思っています。これを目指すにはお客様が使いやすく、売り上げにつながるものでなければならないため、製品を開発して終わりではなくお客様の声を聞きながら改善していきたいです。

■音が人に与える影響も研究中

USENでは音が人に与える影響を大学などの研究機関と共同研究しています。ただBGMを流すのではなく、どの音楽をどこで流すと人に変化が起きるのかを研究することで、オフィスや学校など目的に応じて音楽を活用することができます。かつて約440チャンネルを提供していた時代は、お客様がなかなかチャンネルを変えず、流れる曲を固定する店舗が多くありました。そこでAIを活用して、店内にいるお客様の層に合わせてプレイリストを自動作成するなど、それぞれの店舗ごとに店内に合いそうなBGMを選曲できるようになりました。「こういったサービスがあったらいいよね」というお客様の声を聞きながら、新しいサービスやコンテンツを展開できるのがUSENの強みだと思います。

■大学生へのメッセージ

自分の夢にチャレンジできたからこそ、今の自分があると思っています。大学生のみなさんは、率先的に行動してみてください。インプットも大事ですが、アウトプットも意識してほしいです。
また大切なのが素直さです。世の中の動きや人に言われたことに対して真摯に受け止めながら自分に落とし込める人が大きく成長すると思います。時代が大きく進んでいく中で、吸収しよう、アウトプットしようという能動的なアクションやチャレンジ精神を、ぜひ大事にしてほしいです。

学生新聞オンライン2024年1月12日取材 法政大学3年 島田大輝

武蔵野大学4年 西山流生 / 上智大学短期大学部2年 大野詩織 / 津田塾大学4年 大川知 / 法政大学3年 島田大輝

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