防衛省 統合幕僚学校 国際平和協力センター長・一等陸佐 渡邉邦嘉

国連PKOなど世界で活躍する自衛官を育成

防衛省 統合幕僚学校 国際平和協力センター長・一等陸佐 渡邉邦嘉(わたなべくによし)

■プロフィール
平成23年4月、陸上幕僚監部教育訓練部(市ヶ谷)に配属。米国中央軍司令部派遣連絡官(米国・フロリダ州)や国連代表部防衛駐在官(米国・ニューヨーク)、陸上総隊司令部、第4特科群長兼上富良野駐屯地司令(上富良野)などを経て令和6年3月より現職。

■防衛省・国際平和協力センター
自衛隊は国防だけではなく、国際平和協力という重要な役割を担っている。その中心となるのが国際平和協力センターだ。ここでは調査研究の他に、国連PKOなど世界で活躍する自衛官を育成している。

■どのようなお仕事ですか

自衛隊が任務として行う国際平和協力活動には、国連平和維持活動(国連PKO)への協力をはじめとする国際平和協力業務、海外の大規模な災害に対応する国際緊急援助活動、国際平和共同対処事態に際しての協力支援活動などがあります。
国際平和協力センターの役割は、国際平和協力活動に従事する防衛省職員や諸外国軍人に対する教育と、国際平和協力に関する調査研究を行うことです。教育では基礎、中級、上級の3つの課程があり、自衛隊員や関係省庁職員の他、世界各国から留学生も参加し、PKOなどの実践的な内容を学んでいきます。

■仕事のやりがいは何ですか

ニューヨークの国連代表部で働いていたときや国際会議に出席したときは、「自分は日本の代表だ」と思っていました。日本代表を務めるのはとても名誉なことであり、自分自身をしっかりと律しなければいけません。自衛官として体力や能力を最大限に発揮して、国際平和協力の現場で貢献できたときの達成感は大きなやりがいです。
国際平和協力センターでは、学生や将来的に海外勤務をする人に、私の今までのキャリアや経験を教えることができるのもやりがいの一つです。私が国連代表部でPKOを担当していたときに「もっと知っていればよかった」と実感した、ナショナル・ストラテジックな視点での議論や意思決定について伝えています。原稿準備やスピーチ、最新の情報の把握、多岐にわたるマネジメントなど苦労も多い仕事ですが、それだけに魅力も大きいです。

■異文化理解で大切なことは

国際平和協力の仕事には、文化や習慣の異なるさまざまな国や地域の人々とのコミュニケーションが不可欠です。自分の思いを言語化して日本語の他、英語やフランス語といった外国語で正確に発信することが求められます。
海外の人と仕事をすると、「自分の当たり前が当たり前じゃない」ということがよくわかります。たとえば、会議の開始時刻になっても出席者が集まらないことなどよくあります。そんなとき、「それぞれ忙しい中で会議に出席するのだから、絶対に開始時刻に間に合わなければならないということもないのだな」と理解します。相手を非難するのではなく、違いを認め、柔軟に対応することが大切です。
また、それとともにさまざまな意見や情報に振り回されず、自分の軸をしっかりと持つことも大切です。私の軸は「日本のため、国民のため、国際平和・安全のため」です。この軸があれば、誰が何を言ってもぶれずにいられます。

■大学生へのメッセージ

自衛隊では国際的な仕事を含め、さまざまな経験ができます。日本代表として国際平和に貢献できることは、大変光栄なことでもあります。自衛官を目指す人には「自分の得意なことを活かせる仕事や部署がきっと見つかるはずです」と伝えたいです。
最後に、国際平和協力の未来に向けて大切なのは、「視野を広く持つこと」です。日本のメディアではあまり話題になっていなくても世界を見渡せば大変なことになっている地域がたくさんあります。
ニューヨークの国連代表部での勤務が終わって日本に帰ってきてから、そのようなギャップを感じたことがありました。「あ、世界ではこんなことが起きているんだな」と視野を広げていったら、それぞれの共通項や違いが見つかって、新しい気付きや発見につながるのではないかと思います。

学生新聞2024年10月1日発刊号 早稲田大学4年 西村夏

法政大学4年 鈴木悠介/早稲田大学4年 西村夏/東洋大学2年 越山凛乃/上智大学3年 網江ひなた/國學院大學2年 寺西詩音/N高等学校2年 石川輝

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