甲府市長 樋口雄一
伝統的な価値と新たな都市像が交差する、甲府市の魅力とは

甲府市長 樋口雄一 (ひぐちゆういち)
■プロフィール
座右の銘「一雨千山を潤す」。趣味は読書。尊敬する人は坂本龍馬、石橋湛山。山梨県立甲府第一高等学校、専修大学を卒業。「論卑くして行い易し」を政治信条とし、平成11年山梨県議会議員初当選、その後県議会議員4選、平成19年には山梨県議会副議長。平成27年に第39代甲府市長就任。現在、3期目。
町内会長や地方議員を務めていた父親の影響から議員を目指したというのが、樋口雄一甲府市長。子育て支援や若者支援に尽力されています。大きな転換点として期待される、リニア中央新幹線の開業を見据えたまちづくりなど、甲府の未来に向けた取り組みについてお伺いしました。
■自分たちの発意で行動するということ
幼いころから、町内会長や地方議員を務める父親の傍にいたため、ルールづくりやその活動が身近にある環境で育ちました。その中で「まず、自分たちのことは自分たちで決めて、決められないことは人に頼る」という考え方を、自然と幼少期に培いました。大学卒業後は、保険や共済を販売するような仕事に就き、サラリーマンとして働いていました。並行して父親の仕事にも関わっており、父親が仕事を辞める時に、「自分もチャレンジしてみよう」と思い、会社を辞めました。そのような中、阪神淡路大震災でのボランティア活動や被災者支援などを体験しました。支援を行う中で、被災者を山梨へ招待するなど、交流企画を行い、行政だけではできない活動があることを学びました。自分たちの発意で行動することの大切さは、現在の市政にもつながっていると感じています。
■社会全体で子どもを育む
市長就任から12年目を迎える現在、特に力を入れてきたのが子育て支援です。就任後は、従来の高齢者・児童・障がい者福祉が一体となっていた体制を見直し、新たに「子ども未来部」を設置しました。まず、最初に取り組んだのは、子育て支援をより重点的に進めるための組織づくりです。具体的には、子どもに関わる全ての大人が連携・協働し、子どもの育ちに関する活動をより効果的に推進していくための「子ども応援プラットホーム」という仕組みを立ち上げました。子どもたちを応援していく活動に賛同していただける大人の方々を、「子育ち応援者・子ども応援団体」として登録し、社会全体で子どもを支える体制を整えています。また、季節を問わず室内で元気に遊べる「おしろらんど」は、子どもの発達を促す場として親世代から高い評価を得ています。子育て支援は、1つの施策だけで解決できるものではありません。総合的に取り組みを進めていくことを大切にしながら、政策を進めてきました。その甲斐もあり、民間団体(NPO法人 エガリテ大手前)による「次世代育成環境ランキング」では、2023年から3年連続で、甲府市が全国62の中核市の中で総合順位1位となりました。
■若者と企業をつなぐ取り組み
また、大切だと思っているのは、若者に対して「働く場所」をしっかりと作ることです。そのため、甲府市はスタートアップ企業との連携を進め、地域に新しい力を注入する仕組みづくりに取り組んでいます。また、連携中枢都市圏(県央ネットやまなし)の12市町が協力し、「合同企業説明会インターンシップフェア」を実施しました。甲府駅から会場までバスを運行するなど、都市部の学生や若者が気軽に参加できる工夫を行っています。来場者は約300人にのぼり、山梨県や甲府市の企業を知るきっかけとなっています。さらに、メタバース空間で開催する「メタバース合同企業説明会」も実施しており、オンライン上での説明会参加者も増加しています。こうした取り組みを通じて、企業と若者の間でキャッチボールが生まれ、互いにとって良い関係が築かれていくことを期待しています。
■「甲府らしい街づくり」を目指して
私は、「甲府らしい街づくり」を大切にしています。2019年に開府500年を迎えた甲府には、長い歴史や文化があります。この魅力を生かしながら、未来につながるまちづくりを進めていきたいと考えています。具体的には、フルーツ王国としての魅力に加え、ワイン産業やジュエリー産業などの地場産品の拡充をおこなっています。また、甲府城周辺や温泉地の再整備を進め、かつて栄えていた地域を再現していくことも目標のひとつです。さらに、甲府を「まち歩き」や「山のぼり」の拠点にしたいとも考えています。甲府は、少し移動すれば自然に触れることができ、20分ほどでハイキングやゴルフにも行ける、「オンとオフの切り替えがしやすいまち」です。そうした甲府ならではの魅力を発信し、多くの方に「甲府ファン」になっていただければうれしいです。また、百貨店跡地などの再開発についても、“点”で終わらせるのではなく、“線”としてつなげていきたいとも考えています。歴史や文化、自然、交通を結びつけながら、甲府全体の魅力を高めていきたいです。
■リニアが生み出す新しい玄関口
今後の大きな転換点として期待しているのが、リニア中央新幹線です。移動時間が大幅に短縮されることから、山梨から都内へ通勤・通学するという新しい生活スタイルも可能になるかもしれません。私は、リニア中央新幹線によって、甲府が「新しい玄関口」になる可能性を持っていると考えています。一方で、既存の甲府駅周辺と、新しくできるリニア駅周辺の役割分担も重要だと考えています。甲府駅周辺は政治・経済・文化の中心として、新しいリニア駅周辺は新たな活力や交流を生み出す場所として発展させていきたいです。
■大学生へのメッセージ
近年は、SNS上で様々な意見が飛び交う時代です。だからこそ、「主観」と「客観」の両方を踏まえたうえで、多様な意見を整理し、前に進んでほしいです。特に、政治や行政の道を志す人には、私の政治理念でもある「一雨千山を潤す」という考え方を大切にしてほしいと思っています。1人ひとりの日々の小さな行動が、誰かの生活を良くしていく。それぞれがこうした思いを持って働くことで、組織全体に良い相乗効果が生まると思います。10年後の主役は学生である皆さんです。さまざまな機会に積極的に挑戦し、自分の進路を選択してくださいね。
学生新聞オンライン2026年5月18日取材 成城大学2年 小澤実桜

情報経営イノベーション専門職大学2年 山田千遥/京都芸術大学1年 猪本玲菜/成城大学2年 小澤実桜


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