株式会社永谷園ホールディングス 取締役社長COO(最高執行責任者) 上田谷 真一
「日本の味」を世界に展開。ニッチで勝つ成長戦略
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株式会社永谷園ホールディングス 取締役社長COO(最高執行責任者) 上田谷 真一(うえただに しんいち)
■プロフィール
1970年埼玉県生まれ。東京大学卒業後、ブーズ・アレン・ハミルトン(現 PwCコンサルティング)入社。その後、ディズニーストア、クリスピークリーム、TSIホールディングスなどの数々の会社で社長を務める。2024年永谷園ホールディングス入社。2026年4月より現職。
お茶づけやふりかけで知られる永谷園。伝統を重んじつつ、乾燥技術を極め、他社にはないこだわりで海外展開を進めている。今年4月就任の上田谷社長に、会社の今後の展開とともに、学生に向けて「訪れたチャンスに食いつき、全力で取り組むところに仕事の楽しさがある」と語っていただいた。
高校時代しばらくはラグビー漬けの日々を送っていました。遊ぶ時間はほとんどなく部活を辞めた後は結果的にストイックな高校生活を送っていたので、大学ではとにかくいろいろなことに挑戦しました。複数のサークルを掛け持ちしていたので、友人の幅やネットワークを大きく広げることができました。特定の狭いグループに閉じこもることがなかったので、社会に出ても年齢や人種に関係なく、多様なバックグラウンドを持つ方々と関わる上で役立っています。
大学での勉強は、新卒で入ったコンサルティング会社での仕事に、非常に役に立ちました。当時は数字で定量化してロジックを詰めていくコンサルティングの手法が珍しく、ゲーム理論などの経済学の考え方が、物事を整理し説得する際に役立ちました。物事を絶対的な良し悪しではなく、相対的に判断する思考のフレームワークが確立され、その後の決断が非常に楽になりました。皆さんも学校の勉強を通じて、自分なりの判断軸を一つ身に付けておくと、社会に出てからも応用が効くはずです。
■目の前のチャンスに食いついていく
コンサルティング会社に入ったきっかけは、大学3年生のインターンでした。友人に誘われて参加したのですが、あるテーマを1週間かけて調べて分析して結論を出すというのが非常に面白く、結局バイト期間が終わると同時にそのまま就職を決めました。30代過ぎまでコンサルティングやベンチャー育成の仕事に携わる中、ご縁があって会社の立て直しを任されたのが、経営者としての第一歩でした。目の前の仕事に一生懸命取り組むことで次々と声がかかり、現在の永谷園へとつながっています。
私はご縁やチャンスがあれば、まずはそこに食いつくようにしてきました。キャリアをどれだけ設計しても、計算通りにはいかないものです。
それよりも、目の前のチャンスの中で最も面白そうなものに飛びつき、飛びついた以上は後悔しないよう全力で取り組む。そうすれば、どんな仕事でも楽しさが見えてきますし、そうやって場数を踏んでいくことが結果的に将来やりたい仕事への近道になります。私の場合は、ご縁のあった会社の組織を動かす仕事に面白さを感じ、何十年も続けてきました。
■永谷園グループのグローバルな挑戦
我々グループの核となるのは、皆さんがよくイメージされるお茶づけやみそ汁、ふりかけなどの加工食品事業を展開する「永谷園」です。これが当グループの創業の原点です。永谷園の事業を支えているのは、主に「フリーズドライ」という乾燥技術です。凍らせて水分を抜くこの技術の良いところは、添加物を使わずに長期間保存できることです。風味を損なわず体に良いだけでなく、水分を抜くことで輸送コストが抑えられ、環境負荷の低減にもつながっています。このコア技術を活かした商品展開が、グループの柱となっています。
また、買収したシュークリーム専門店「ビアードパパ」は、現在国内外で約500店舗を展開しています。流行り廃りの激しいスイーツ業界において、非常に安定した稀有な事業です。数年後には収益の3分の2を海外で稼ぐ予定で、国内と同等以上にグローバル展開が進んでいます。
これほど成功した理由は、単なる美味しさだけでなく、小さなお店でその場で焼くスタイルにあります。店内で焼くことで広がる匂いには人を惹きつける力があり、標準化されたシンプルなオペレーションながらも、ライブ感を演出することに成功しました。冷凍や冷蔵の商品にはない、このライブ感こそが成功している大きな要因だと考えています。
このように、加工食品事業を中核に据えつつ、積極的にグローバル展開を進めているのが当グループの特徴です。
伝統的なイメージがあるかもしれませんが、国内に留まらず海外へ攻めていける、非常に面白い会社です。日本発のグローバル企業をもっと増やしていくことが目標です。
今後は、混み合った分野で価格勝負をするよりも、たとえニッチであっても確実にニーズがあり、私たちが圧倒的に強いと言える分野で勝負したいです。
■message
この先何が起こるかは読めませんし、自分の選択が結果として良かったかどうかを事前に予想することは不可能です。環境は自分の力で変えられるものばかりではなく、向こうから勝手に変わっていくものです。環境が変わることを前提に、どんな状況になっても、自分が一番楽しめるように腹をくくることが大切だと思います。たとえリスクがありそうでも、直感的に「一番面白そう」「やりたい」と思ったことに飛びついてみてください。
また、全ての意思決定は常に正しいです。なぜあちらを選ばなかったのかと悔やむこともあるかもしれませんが、選んだ道こそが自分にとっての正解だと私は思っています。
人生の分岐点は無限にありますが、自分なりに考えて選択したことは、決して間違いではありません。一番面白そうなものに食いついて、一度選んだら、これが正しい選択だったと思い、後悔しないことです。後ろを振り返る暇があるなら、前を向いて進んでいきましょう。
学生新聞2026年4月号 東京都立大学3 年 坂倉彩月

国際基督教大学2 年 新荘紅愛/獨協大学1 年 中津亜結梨/東京都立大学3 年 坂倉彩月


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