教科書の先を楽しみつくす学び方 with 画家&クイズ王 ー QK GO特別編!ー!

アートゥーン! 真田将太朗さん/QuizKnock 伊沢拓司さん
株式会社baton(東京都品川区、代表取締役 衣川洋佑)が運営するQuizKnockの伊沢拓司さんとアートゥーン!の真田将太朗さんは、5月13日(水)に私立川村中学校・高等学校を訪問し、 探究学習にフォーカスした講演会を行いました。
今回はQK GO特別編と題して、探究学習で求められる「正解のない問題」と向き合う力の育み方をクイズやアートを通した全員参加型ワークショップにより、紐解いていきました。
講演は2人の肩書や経歴、現在の活動などを簡単に説明する導入から始まり、真田さんが実際に舞台の上でキャンバスに絵を描くパフォーマンスを行いました。木炭や食パンを活用した画家ならではのドローイングプロセスを間近に見ることができ、生徒にとっては貴重な体験になったと思います。その後、伊沢さんが生徒からクイズの出題を募り、多くの手が挙がる中、伊沢さん自身がマイクをもって走り回る姿が印象深かったです。クイズ王である伊沢さんを悩ませる問題に、会場は大いに盛り上がりました。
クイズが一段落し、伊沢さんから今回の講演会に至る経緯について説明がありました。クイズは問題に対して、ただ1つの答えがあるが、クイズ王としてキャリアを積んでいくというのは前例がなく、それ自体は答えのない問いであったと振り返りました。答えがなく、売れることが正解だとしたら時として正解も変化する芸術。その分野で活躍されている真田さんに、伊沢さんは共通点を見出したそうだ。2人は、「こたえ」というのは、正解のある問いに対するアンサーとしての「答え」と、正解のない問いに対するレスポンスとしての「応え」の2種類があるという考え方を語りました。正解のない問いに対して、ひとまず「応え」である仮説を置き、さらなる問いにつなげ、また「応え」を出す。このように、問いを立て、レスポンスを出す過程を繰り返していくことで、だんだんと核心に迫っていくことが、答えのない問いへの取り組み方なのだとアドバイスしました。これらを踏まえ、2人から生徒たちへ、3分以内にフリーハンドで真円を描けというお題が出されました。チャンスは3回、それぞれがどのような過程を経て、真円を描こうとするのか、2人とも興味津々で生徒たちの様子を伺っていました。ペンではなく紙を動かしたり、正方形の紙を折って紙自体を円に近づけたりと、生徒それぞれが問いを重ねて、知識や発見を活かしながら、自分なりの応えを出していました。この知識や発見は、学生時代のアンサーを導き出す経験や教養がベースとなっており、どちらの「こたえ」が重要であるかではなく、どちらも結びついて離れないものです。このように自分が見てきたことや得てきた知識と比較し、応用しながら、これから立ちはだかるであろう様々な答えのない問いに向き合うことに役立ててほしいと締めくくりました。
執筆者:獨協大学2年 中津亜結梨




■講演会後のQuizKnockの伊沢拓司さんとアートゥーン!の真田将太朗さんインタビュー
QK GOの活動内容や、今回の特別編についてのお気持ちをお聞かせください。
伊沢拓司さん:QK GOは2019年に始めたプロジェクトで、QuizKnockのメンバーが完全無償で全国各地の学校に伺い、キャリア教育や学習についての講演会を行っています。これまでに全47都道府県を回りきり、合計で60校以上を訪問しました。応募があった場所にはどこにでも行き、熱意のある学校に優先して行くという形で活動しています。
今回は新しい方向性の1つとして、QuizKnockの兄弟グループである「アートゥーン!」から真田に来ていただきました。2人だからこそできることがあると思って始めた試みです。最近は特にキャリア教育などで探究学習に関する興味が広がっており、教育現場でも「答えのない問い」や「問いを深めること」に対する注目度が非常に高まっています。その中で、真田は絵を描くときの問いの深め方が面白く、ロールモデルになると思い、このプロジェクトが立ち上がりました。
真田将太朗さん:「アートゥーン!」は「芸術をもっと身近に」をコンセプトに、東京藝大出身の美術・音楽分野の8人が、芸術に触れるきっかけになるような親しみやすいコンテンツを届けることを軸にYouTube活動をしています。ものを作ったり演奏したりすることは、自分なりにやってきたことを正解にする仕事だと常々思っています。似ているようで違うキャリアを歩んできた私と伊沢さんの2人が、QK GOというプロジェクトで学生の皆さんに向かって「こういう問いの応え方がある」と解説させていただく機会があるのは、教育としても良いですし、学生の皆さんの今後の指針になると考えて、今回参加させていただきました。
自分の興味関心を見つけるきっかけや、見つける上で大切にしていることを教えてください。
伊沢さん: 私はクイズに偶然出会ったため、偶然の出会いが今の自分を作ることもあるという感覚を持っています。ただ、偶然何かに出会ったとき、それを大事にできたり、のめり込んだりできる時間や周囲の環境が重要です。いざ出会ったときに、0から1のものを1から100へと育んでいけるような、自分自身のメンタル作りと環境作りが必要だと思っています。
私は進学校でそのような環境を得られたことがプラスになったと感じているので、そうした環境を色々な場所で再現できるよう、QuizKnockやQK GOの活動を通して、皆さんの興味関心をそのまま大切にする教育を広めています。
真田さん:私は小さい頃から絵を描いており、偉大な作家の作品を見るのが元々好きでした。僕も中高一貫の進学校と呼ばれるところに入ったあと、高校3年生のときに、自分の本来の興味関心は何が1番であるかを、自分なりに分析しました。その結果、やはり絵を描くことや、先人たちが描いてきた作品について考える時間が、自分にとって1番テンションの上がる学びでした。そういったことを大事にしたいと考え、最終的に進路を美大や芸大に決めました。 芸術を生業としていくには相当な覚悟が必要ですし、実力を追いつかせる作業も必要でした。ただ、それがそれほど苦ではなかったので、スキルを獲得した結果としてやりたいことができるようになること、つまり「自分にできることを増やしていくこと」にステップアップする喜びを感じて、今の職業の選択に至っています。
今回2人でタッグを組んでみて、どんなところが2人ならではだと感じましたか?
伊沢さん: 単純に視点が2倍になることが素晴らしいと思いました。1人の人が言っている主張には、奥行きも立体感も出にくいため、多面的に検証されるということに今回はすごく意味がありました。2人がそれぞれ別の視点で語ることで、どちらかの言葉が刺さる人もいたと思います。そういった意味で、教育的な意義があったと感じています。
真田さん:私は画家なりに普段から理知的にあろうと心がけていますが、自分なりの表現をするときに、かなり主観的で恣意的な言葉選びをしてしまいがちです。今回は伊沢さんから「俺的に〇〇をこういう風に見たけれど、真田的にはどう?」と問いかけてもらい、物事を2つの目線から見ることによって立体的に見ることができ、語れることが2倍になるという良さを、まざまざと感じる機会になりました。
生徒の反応で印象的だったことを教えてください。
伊沢さん:皆さんがすごく手を動かしてくれた印象です。絵をいきなり描くように言われても、なかなか難しかったと思いますが、結構ガツガツ描いたり、何かやってみようという気持ちが生まれたりしていました。私たちが話しているときにも、手を動かして描いていたほどです。私たちがきっかけとなって、描きたい気持ちが生まれている。私たちが種をまいて、それが咲いたという感覚があり、この経験がひとつのきっかけになるといいなと思っています。
真田さん:自分が描いた絵を人に見せるのは、恥ずかしさもありますし、最初はハードルが高いものだと思います。しかし、いざ見せてみて、他者からどういう反応が返ってくるかを自分の身体で受け止めるという行為は、非常に面白い機会です。絵画がなぜ作品たりうるかというと、必ず見る人がいるからです。見る人がおらず、描いた瞬間から倉庫にしまわれれば、それはただの板になってしまいます。見る人がいて、初めて作品と呼ばれる。それは作品作りに限らず、何かを表現したり、声に出したりするなどの行為全般に言えることです。他者がいて、他者にどう捉えられるかを考えながら表現するという面白さを、今回感じてくれているのは良いことだと思いますし、嬉しかったです。
伊沢さん:言葉を1つ放つだけでも、絵を描くだけでも、表現や表明する行為には勇気が必要です。しかし、勇気を持ち、他者と関わることによって生まれるものは2倍、3倍に増えていくはずですので、その第1歩を踏むきっかけを今回作っていただけたのは嬉しかったです。
真田さん:実際に皆さんに絵を描いてもらうとき、「今日1番インパクトに残ったもの」というお題を出したのですが、朝からの1日を振り返りながら、しっかり考えてくれたことが感じ取れて嬉しかったです。純粋に、素直に課題を受け止めて描いた痕跡が見えて、非常にありがたかったです。
今の中高生にとって必要な学校教育とは何だとお考えですか。
伊沢さん:今は他人の価値観が入り込みやすく、正しさや自分の信じるものが何なのかを見失いやすい時代だと思います。その中で、今日のキーワードの1つに「素直さ」があったと思っています。素直に取り組む。素直に向き合う。素直に疑問に思ったことを深めていく。これらを皆さんが素直に実践してくれた。困難に向き合うときも、この素直な取り組みの姿勢、吸収の姿勢を思い出してもらえたらなと。今日やった方法で、己の疑問と向き合う習慣を身につけてくれたら良いと思います。
真田さん:本来、情報は不安定で不確定なものであるという前提を理解してほしいと思っています。それぞれの学問は、本来その学問の外側にあるものに対して、より良くあろうという性質は持ち合わせていないと考えています。学問それ自体には、他の学問領域と橋渡しをしたり、人間社会により良い影響を与えたりするという向上心はありません。だからこそ、学んだそれぞれの学問が人の社会の役に立つように橋渡しをする、情報のやり取りやコミュニケーションが欠かせないと思っています。
現代は、スマートフォンやSNSの利用で色々な情報が流れ込んできます。そのため、不安定な情報の交換にこそ、人間的な為すべき役割があります。今摂取しているこの情報は本当に正しいのか、この不安定な情報から自分自身がどういう風な答えを導き出して、どういう風にアクションをするか。しかし、そのアクションが間違っているかもしれないので、またアクションし直す。そういう前提で、これから学んだり動いたりしていってほしいと思います。
執筆者:東京都立大学4年 坂倉彩月


■講演会後の先生・生徒インタビュー
印象に残った言葉は?
村上敦貴先生:印象に残った言葉は、「答え」ではなく「応え」という言葉です。世界から投げかけられる問いに、自分たちがどう応えていくのかというところに学問の面白さがあると感じました。また、真田さんの「芸術に完成はない」という言葉も印象的でした。本校には美術系を目指す生徒も多く、生徒たちにも強く響いていたと思います。
浅谷空美さん:1番印象に残ったのは、真円を描く場面で伊沢さんが「ガッツで描いてもいいじゃないか」と言っていたことです。私はこれまで、数学や理科では正しい答えを出すことが大切だと思っていました。しかし、問題に向き合う姿勢や挑戦する気持ちも大切なのだと感じました。完璧な答えだけを求めるのではなく、まずは勢いを持って挑戦してみることも必要だと思いました。
風間柚香さん:「答えのない問い」という言葉が1番印象に残りました。自分で疑問を見つけ、それに対して考え続けることが、受験や進路を考えるうえでも大切なのだと感じました。
岩﨑美穂教頭先生:「答え」と「応え」という言葉が特に印象に残りました。普段の授業では、問いに対して決まった答えを出すことが中心になります。しかし、世の中には答えのない問題も多くあります。その中で、自分なりの「応え」を積み重ねていくことが大切だと感じました。
進路を考える中で響いたことは?
浅谷さん:偏差値や周囲の目を気にしてしまうことがありますが、自分のやりたいことや志望理由を持ち、自分の勢いを大切にしようと改めて感じました。
風間さん:私は今、学びたいことがまだ定まっておらず迷うこともあります。しかし最近、自分の思いを率直に伝えた経験があり、そのことと今回の講演が重なりました。正解がなくても、自分から進んで行動することが大切だと思いました。
探究の授業で心がけていることは?
村上先生:本校では高校1年生で、企業から与えられたミッションに対してグループで解決策を考える探究活動を行っています。抽象的な課題を具体化し、自分たちで問いを立てることを大切にしています。問いを立てる経験は少ないため、生徒たちは戸惑いながらも挑戦しています。実社会との接点を持ちながら学ぶことが重要だと感じています。
浅谷さん:「正解が1つではない」という考えを大事にしています。活動の中で行ったブレインストーミングでは、相手の意見を否定せず、自分の考えを積極的に発信することを意識しました。自信がなくて話せない人もいましたが、今回の講演を通して、まずはガッツを持って行動することが大切だと感じました。
風間さん:探究活動では、自分たちで考えながら問題解決や開発を進めています。明確な答えがない中で、少しでも理想に近づけるように何度も試行錯誤を重ねています。
岩﨑教頭先生:本校では中学3年生から社会課題を見つける探究活動を行っています。困っている人や社会の課題に目を向け、高校でさらに学びを深めていきます。答えのない問題に挑戦する経験は、生徒たちにとって大きな成長につながると思います。
中高生へのメッセージ
村上先生:私は国語科ですが、大学では商学部に進学し、文学や心理学、生物地学など幅広い分野を学びました。その中で、学問はすべてつながっていると感じました。生徒たちには、この講演をきっかけにさまざまな分野に興味を持ち、多くの人や学問との出会いを大切にしてほしいと思います。
浅谷さん:高校3年生になった今、もっと勉強しておけばよかったと思うことがあります。今はYouTubeなど身近なところにも学びのきっかけがたくさんあります。楽しみながら学問に触れることで、自分の興味や将来につながると思うので、ぜひいろいろな分野に触れてほしいです。
風間さん:普段から「なぜそうなるのか」を考えることも大切だと思います。中学生のうちから疑問を深めていけば、将来進路を考えるときにも、自分の興味や経験につなげやすくなると思いました。
岩﨑教頭先生:私は数学を担当していますが、現在はAIなどによって簡単に答えを出せる時代です。その中でも、答えだけでなく「考える過程」を楽しむことを大切にしてほしいと思っています。授業では、教員自身が教科への思いを伝えることも意識しています。
執筆者:津田塾大学4年 山下さくら

岩﨑美穂教頭先生 / 風間柚香さん / 浅谷空美さん / 村上敦貴先生

学生新聞オンライン2026年5月13日取材 津田塾大学4年 山下さくら/東京都立大学4年 坂倉彩月/獨協大学2年 中津亜結梨/城西国際大学 3年 渡部優理絵 (法政大学 2年 渡辺碧羽)


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