キリンビバレッジ株式会社 代表取締役社長 井上一弘

お客様の毎日に寄り添う「飲みもの」で、挑戦をし続ける

キリンビバレッジ株式会社 代表取締役社長 井上一弘 (いのうえかずひろ)

■プロフィール
1966年1月生まれ、埼玉県出身。1988年青山学院大学経済学部卒業後、キリンビール株式会社入社。2003年酒類営業本部首都圏地区本部首都圏流通第3部長、2015年キリンビールマーケティング部部長、2021年常務執行役員マーケティング本部流通営業本部長を経て、2024年キリンビバレッジ代表取締役社長に就任。

「午後の紅茶」などの商品で知られるキリンビバレッジは、飲料業界の第一線で活躍する企業だ。変化の激しい時代の中で、どのように強みを維持し、新たな挑戦を続けているのか。社長である井上一弘氏に、これまでの歩みや仕事への向き合い方、そしてこれからの展望について話を伺った。

大学時代は4年間をどう楽しむかを意識して過ごしていました。当時マリンスポーツに興味があったため、ヨット部に入部し、年間130日ほどを合宿所で生活していました。またヨット部は部員の部費で運営されていたため、宅配便やアイス工場などでアルバイトも行っていました。好奇心から六本木でバーテンダーとして働いていたこともありました。様々なお客様とのかかわりを通して貴重な経験ができたと思っています。
就職活動は、父親が食品メーカーで働いていたことから食品メーカーで働く生活や、会社が生み出す商品に魅力を感じ、キリンビールを受けました。実は、その前に受けていた会社があったのですが、正直に若者目線のCMに対する意見をぶつけたことが原因なのか、面接で落ちてしまったんです。そこでキリンビールに直接電話をかけ、面接の機会をいただきました。面接の際、ゼミで食品メーカーについて学んでいたことから、率直な意見を言ったことを覚えています。

■成果を生み出す仕事への向き合い方

入社すると、この組織の中でどう勝ち抜くかを考えるようになりました。そのために必要だと感じたのが、実績です。主に営業を担当していたのですが、目標達成をする気持ちと能力は高かったと自負しております。社内の人事評価システムに目標によるマネジメントを行うMBO-Sというものがあり、毎年自分の仕事の目標を決めるんです。その際、決めた目標を達成するために、変動する環境の中で毎年やり方を工夫しながら100%達成を目指しました。これがよい循環を生んだと思っています。さらに、目標を細分化して達成する原田隆史先生の原田式目標達成という思考法も取り入れていました。成功は技術であり、目標の達成のために自分を徹底的にコントロールする。その考え方に共感したからです。毎日振り返り、やること、反省すること、1日をやり直せるならどうするかなどを考え、自分自身の“日に新たに、日々新たなり”のPDCAを3年間回し続けました。その結果、自分の仕事のやり方を身に付けられたと感じています。

■商品・社会・組織で生み出す価値

キリンビバレッジには、代表的な商品に、今年で40年を迎える「午後の紅茶」があります。1986年、“冷やしても濁らない「クリアアイスティー製法」”で、紅茶飲料のペットボトル化に成功し、市場を創造してきました。実は世界では、コーヒーよりも紅茶の消費量の方が多く、日本人にも紅茶をより多く飲んでもらえるような工夫を、現在でも行っています。例えば、夏にも紅茶を飲んで欲しいことから、「夏のアイスティー提案」を行っています。また、紅茶の間口を拡大する事を目的に、昨年は「FRUITS & ICE TEA」を発売しました。この商品は、「コーヒーと異なり、紅茶は飲むタイミングが分からない」というお客様の声にもお応えできるよう、紅茶ではなくフルーツ飲料の切り口から開発したものです。果汁を7%含んでおり、ジュースのように感じるのですが、最後に紅茶の味が来る商品です。
また、「午後の紅茶」は産地との取り組みも行っています。「午後の紅茶」シリーズの原材料である茶葉は、スリランカで生産された茶葉を多く使用させていただいており、スリランカでの茶葉生産に関わる労働環境の改善や環境保全にも一緒に取り組んでいます。皆様に「午後の紅茶」を飲んでいただくことによって、スリランカ経済も豊かになる循環を作っています。

商品開発やマーケティングなど、様々な工夫を行っていますが、一方で現在飲料メーカーの競争は厳しく、新商品も1000個を作って市場に定着するのは3個のみというのが現状です。これをセンミツと言います。当たり前ですが、清涼飲料にも「付加価値」がある事が重要であり、そこで現在注力しているのがヘルスサイエンス領域の商品です。例えば「プラズマ乳酸菌」はお客様からの認知、評価を得ていることから市場価値が高まっています。そのことを活かして、利益を伸ばし、新たな商品開発へと繋げる良いサイクルを創っていきたいです。プラズマ乳酸菌入り飲料に関しては大人だけでなく子どもへ向けた商品をつくるような工夫もしています。

■明るさが生む組織の力

キリンビバレッジの従業員は皆さんすごく明るいんですよね。良い意味でくじけず、非常に前向きです。この底抜けに明るいことが魅力であり、現在の売り上げに繋がっていると思います。会社の中では、明るく楽しく元気な人は、好感が持たれます。だからこそ、求める学生像としては素朴さがあり、素直で、嘘をつかない人が良いですね。これからの未来予想がつかない中で、探求心を持っている学生も良いと考えます。

■学生へのメッセージ

人生は100年時代と言われていますが、睡眠や仕事の時間を除くと、自分のために使える時間は全体の中でも限られています。この時間をどう使うかで、人の成長に差が生まれます。
世の中には、生まれた環境など人それぞれ違うものが多くありますが、「時間」だけは誰にとっても平等です。この1日24時間をどう使うかが、将来の自分を創ります。
また、人は一度きりの人生を生きることしか出来ません。だからこそ、最期に「いい人生だった」と思えるように、日々を大切にし、挑戦し続けてほしいと思います。後悔のない人生を送るために、今この瞬間を全力で生き、その積み重ねを大事にして下さい。

学生新聞オンライン2026年4月7日取材 津田塾大学4年 山下さくら

津田塾大学4年 山下さくら/国際基督教大学4年 若生真衣/早稲田大学3年 中澤京平

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