山本直寛 芝居は、苦しさと楽しさが表裏一体。だからこそ俳優は面白い!
■プロフィール
株式会社トップコート所属。
1994年8月29日、東京都生まれ。「men’s non-no」の専属モデルを務めた後、役者デビュー。最近ではドラマ「女子高生の無駄づかい」(テレビ朝日)や「行列の女神〜らーめん才遊記〜」(テレビ東京)に出演。その他舞台や朗読劇など幅広く活動。また、2月13日(土)22時放送のドラマ「レッドアイズ 監視捜査班」(日本テレビ)第4話に出演、そして3月5日(金)より配信されるドラマ「お茶にごす。」(テレビ東京)への出演を予定している。
舞台からテレビドラマまで幅広く活躍中、若手俳優のなかでも注目度が高い山本直寛さん。YouTube動画では料理する姿を見せ、その手慣れた姿に魅了されるファンも多い。そんな彼は、役に対してじっくり向き合い、考えて、考える。芝居への熱い思いの根源はどこにあるのか。学生時代に役者の世界に出会ったきっかけから今までを、じっくり聞いた。
■高校の親友がある日、「ループタイ」をしてきた! かっこよかった!
中学・高校までは勉強ばかりして過ごしていましたが勉強は嫌いではなかったので楽しくやっていました。でも、ある日親友に心を動かされました。制服はありましたが、服装は自由で何を着ても良い高校ではあったのですが、突然親友が「ループタイ」をしてきたんです。それを見て「かっこいい!」と思って。さらに彼は、映画も好きだったんです。好きな映画が、黒澤明監督の映画で、他にもディープな映画にもくわしかった。僕は広く知られている作品しか観てないのに。これはもう憧れますよね(笑)。このときから古着や映画や音楽など、自分の知らなかった文化にどんどんハマっていきました。
■就活はしない、俳優の道を進む! と覚悟
早稲田大学に進学して、もう一人の親友からも刺激を受けました。その親友は学校に着物に丸眼鏡でくる人で。変なヤツだな、と思いつつも憧れていたんです。でも彼があまり学校に来なくなってしまって。聞くと俳優学校に通っていると。またもや「かっこいい!」となりますよね(笑)。同じころにモデルの仕事をしていたり、表現をすることが好きだったこともあって、そこから俳優という職業に興味を持ち始めました。
そして短期のワークショップに参加してみたら、また新しい感覚に出会いました。そのとき初めて演じたのが酔っ払いの役なのですが、洋服を良く見せるというモデルの表現とは大きく異なるので、恥ずかしい気持ちでいっぱいで。でも、自分とは異なる人間を表現することの面白さや今までに出会ったことのない新しい感情に出会いましたし、周りの反応も面白かったんです。
そして、大学4年生のときに舞台を作り上げる長期のワークショップに通いました。ここで初めてお客さんの前でお芝居を披露したんです。このときに舞台の熱気を感じて完全に芝居に魅了されました。客席の電気が落ちて真っ暗になった瞬間の、これから何が起こるんだろうというワクワク感に満たされた劇場の空気、そして、舞台が始まるとお客さんが一挙一動を見て反応してくれる。これが役者にのめりこむきっかけとなり、芝居の世界にいこうと覚悟を決めました。
■俳優という仕事は、真っ暗なところをさらに瞼閉じて歩いている感じ
お芝居は自分一人では完成しないけど、一人で準備する時間も長いんです。そして正解がない。これだけやっていれば大丈夫、ということがないんです。考えて考えて、精一杯準備していっても状況が変わったり、掛け合いの中で生まれていく新しい瞬間があったり。想像と違うことがたくさん起きますし、できていないと感じることの方が多いです。考えすぎて眠れなくなることもあります。
ある舞台の稽古で自分なりに考えて臨んだワンシーンがあったのですが、普段は役者に任せて何も言わない監督が「ちょっと違うな」とおっしゃって、次の日からそのシーンはなくなっていました。ドラマでカットされるのとはまた違う、稽古が続く中で「あのシーンがない」と実感しなくてはならない、そんな苦しみを感じました。真っ暗なところを、さらに瞼を閉じて歩いているような感覚です。
でも、何回かに一回、自分でも興奮するほどにピタッと演技がハマる瞬間に立ち会えるときもあるんです。自分の用意したものだったり、相手の返しが響いて自分が想像したものと異なるものが出てきたり。まだまだその感覚に出会えた経験は少ないですが、それは濃い記憶として残っています。あの感覚は本当に忘れられません。それが自分の力になっていて、うまくできなかったり辛くても乗り越えてまた味わいたいと思うほどです。
舞台でスタンディングオベーション、そして5回のカーテンコールをいただいたこともあるのですが、そのときは本当にやってよかったと思いました。お客さんに喜んでもらえたこともとても嬉しかったです。
■原作を読んでやってみたかった役を、オーディションでつかんだ!
『お茶にごす。』というドラマのなかで、「樫沢光輝」という主人公のライバルを演じています。お金持ちで完璧なかっこいい男だったのに、「髭が濃い」ことに気づかれて、その一点で残念な男になる役です(笑)。今まで演じた中で一番コメディータッチの強いキャラクターでしたね。原作が本当に面白くて、この役を自分がやりたいと思っていましたのでオーディションで合格してこの役をいただくことができたので、やった!と。どうしたらこの面白いキャラクターを実写で伝えられるかを考えて臨みました。
笑いの要素って、真剣に取り組んでいるときにふと出てきますよね。なんでもない会話をしていたのに、突然真面目な会話をしだしたら周りはつい笑ってしまったりするように。面白いことを面白くやらない。そんな感覚で、この漫画はコメディーなんですけど、自分の中ではコメディーと思わずに演じました。精一杯「真剣に」演じているのでぜひ観てほしいです。
■面白いと思ったものには、どんどん飛び込んでいきたい
シェイクスピアが大好きなので「リチャード3世」の役をいつかやってみたいです。シェイクスピアは、俳優たちが喋って、演じることで増す面白さがあると感じているのでその一員になってみたいです。
一つひとつの出会いがあって今があると思うんです。だからこそその場その場で出会えた面白いものに飛び込んでいきたいと思っています。舞台の面白さや魅力を伝える一人となれるように力をつけていきたいです。
■Message
今目標ややりたいことがなくても焦らないでほしいです。面白いことにふと出会えるときが来ると思います。だから、どこか気になったり自分が惹かれたことを見逃さないことが大事だと思います。僕も、親友があのときループタイをつけていなかったら、モデルも挑戦しなかったし俳優にも挑戦していなかったかもしれません。俳優という道を進んで心細いときもありましたが、「これが自分にとっては楽しいんだ」という自信はありました。自分の“楽しい”が、いつか大切なものになっていくと信じて、大学時代を楽しく過ごしてください!
学生新聞WEB2021年1月20日取材 津田塾大学 3年 川浪亜紀
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