富士吉田市長 堀内茂
観光と暮らしを守りながら挫折を力に変える挑戦

富士吉田市長 堀内 茂 (ほりうち しげる)
■プロフィール
市政最長の5期目を務める市長。富士山信仰のまちとして、また、富士の湧水を使用し、質の高い生地を織り上げる織物産地として発展してきた富士吉田市を情熱溢れるリーダーシップで牽引する。現在、「富士吉田市を世界一の誇れる街へ」を公約に掲げ、産業振興や観光インフラ整備、防災対策、教育環境の充実などの市政運営を展開している。さらに、富士山の豊かな自然や歴史・文化を次世代へ継承し、市民一人ひとりが郷土に誇りを持てる「輝く未来」の実現に向けて力を注いでいる。
富士山の絶景スポットで知られる山梨県富士吉田市。「日本らしい風景」として海外の方からも人気のあるスポット、新倉山浅間公園のほか、富士急ハイランドや鐘山の滝、名物は、吉田のうどん。今秋には、道の駅 富士吉田の新棟が完成予定。こうした国内外からの観光客に人気を博す富士吉田市において、ここまでの街を築かれてきた歩みと、幾度の挫折を市民とともに乗り越え、観光振興と市民生活の充実に挑んできた堀内市長に同市の魅力を伺った。
私は父親の影響もあり、日本大学に進学しました。当時は学生紛争の影響で大学が休校になることも多々あり、思い描いていたような学生生活ではありませんでした。しかし、その時間を無駄にしたくなかったのでアルバイトとしてホテルオークラで働き始めました。以前からホテル業に強い憧れを持っていたからです。ホテルは普段、必死に働いている人を日常から解放し、夢のような時間を提供する場所です。フロントやウェイターになるにも段階があり、厳しい指導と礼儀作法の習得が必要でした。それでもお客様が笑顔で帰っていく姿を見るたびに、この仕事に誇りを感じていました。国内外でのホテルで研修を重ね、文化や生活様式の違いを学びながら「人をもてなす本質」を、身をもって習得したように感じています。
■富士吉田市への移住で知った自然と絆の力
海外勤務の機会にも恵まれましたが、家族の事情があり退職し、妻の地元の富士吉田市へ移住することになりました。社会人まで、東京で育った私には戸惑いもありましたが、四季折々に姿を変える富士山、澄んだ空気と水、そして地域の助け合いの精神に触れる中で、次第にこの地域が大好きになりました。
確かに、富士吉田市は都会の便利さとは異なることが多いです。しかし、人と人の距離が近く、支えあいや助け合いが自然に根付いています。私はこの地域において、人が本当に豊かに生きるのはどういうことかということを教えてもらったような気がします。
■政治への挑戦とクリーンな市政への決意
私はもともと政治家になるつもりはありませんでした。しかし、家族や周囲の勧めもあり県議会議員に立候補しました。当時は派閥や資金が大きく影響する選挙が行われており、私自身も葛藤を抱えることになります。二期目はクリーンな選挙を掲げましたが落選。その後、十八年間、政治の世界から離れました。
その間、富士吉田市では1期ごとに市長の交代が続き、政策の継続性が失われていました。市民の皆様から「変えてほしい」という声をいただき、私は再び挑戦を決意しました。利権に左右されない、公平な市政を行うことを誓い、市長に就任しました。
■観光都市としての成長とオーバーツーリズム対策
富士山の世界文化遺産登録を機に、富士吉田市はありがたいことに国内外から注目されるようになりました。新倉山浅間公園の忠霊塔や、本町通りから見ることのできる景観は世界中で共有され、年間百五十万人を超える観光客が訪れています。
一方で、交通渋滞やマナー問題など、生活環境への影響も顕在化しました。そのため駐車場整備、公衆トイレの充実、交通整理員の配置など、住民と観光客双方が安心できる環境整備に取り組んでいるところです。観光の量を追うのではなく、持続可能性を重視した政策を進めたいと考えています。
■稼げる街づくりと未来への投資
市民サービスを充実させるには財源の確保が不可欠です。私は「稼げる街づくり」を公約に掲げ、ふるさと納税の強化に力を入れてきました。名産品に依存せず、富士山の水や織物製品など、日常に根ざした返礼品で信頼を積み重ね、全国でも上位の実績をあげています。
その財源を活用し、給食費の無償化、不妊治療支援、子育て支援センターの充実、ICT教育の推進など、子育て世代への支援を拡充してきました。未来を担う子どもたちへの投資こそが、持続可能な地域をつくると信じています。
■DX推進と地域企業の変革支援
行政の役割は、単に制度を運用することではなく、地域全体の生産性を高めることだと私は考えています。そのため市役所内部の業務効率化に力を入れています。情報共有ツールやクラウドサービスの導入を進めることで、意思決定の迅速化を図っています。人口減少社会においては、人手不足は避けられません。だからこそ、テクノロジーを活用し、少ない資源で最大の成果を出す体制づくりが不可欠です。
また、観光分野においてもデータ活用を進めています。来訪者の動向を分析し、混雑の分散や周遊ルートの最適化を図ることで、オーバーツーリズムの抑制につながるはず。単に観光客を増やすのではなく、地域に利益が循環する仕組みを整えることが重要です。これからも、伝統を守りながら変化を恐れず、持続可能な富士吉田市を築いていきたいですね。
■富士山と共に歩むこれからの未来
富士山は大きな恵みをもたらすとともに、噴火というリスクも抱えています。私は防災対策を最重要課題とし、国や県と連携しながら備えを強化しているところです。また、防災訓練では、市民参加型の実践訓練を重ね、発災時の初動対応を可視化し、地域全体の危機対応力を高めています。
これからも防災対策をしっかりと整える中、お越しいただく皆様には、富士の歴史や文化を感じていただきたいと思います。そして、富士吉田市では、麓から登れる唯一の登山道「吉田口登山道」の復興に力を注いでいますので、引き続き、麓から歩いて登る富士山の魅力を発信し、質の高い観光地を目指していきたいと思います。
■大学生へのメッセージ
私の人生は、決して順風満帆ではありませんでした。どんな人生でも挫折はありますし、私自身、夢を抱いて進んだ道が途切れたこともあります。しかし、その都度新たな道を探し、自分を奮い立たせてきました。人間には環境に適応する能力があります。挫折は終わりではなく、次の可能性への入口です。大学生の皆さんには、自分の可能性を信じ、恐れずに挑戦し続けてほしいと思います。
学生新聞オンライン2026年3月2日取材 京都芸術大学1年 猪本玲菜

情報経営イノベーション専門職大学2年 山田千遥/城西国際大学2年 渡部優理絵/京都芸術大学1年 猪本玲菜


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