蕨市長 賴髙英雄

出会いを力に、未来を動かす

蕨市長 賴髙英雄(よりたか ひでお)

■プロフィール(2026年9月8日現在)
・1963年生(62歳)。蕨市出身。埼玉県立浦和西高等学校を経て、埼玉大学教養学部卒業。1991年7月に27歳で蕨市議会議員に初当選し、2003年まで3期にわたって務める。2007年6月に43歳で蕨市長に初当選(現在5期目)。以来、市民と心が通い合い、暮らしを支える「日本一のあったか市政」を掲げ、蕨市民7万7千人の幸せのために、全力を尽くしている。

日本一小さな市であり、人口密度日本一を誇る蕨市。都心へのアクセスの良さという利便性の高さと、人と人とのつながりが生む温かさを兼ね備えています。SEを経て政治の道へ進んだ蕨市長の賴髙英雄さんに、これまでの歩みや、市民とのつながりを大切にした街づくり、蕨市の未来についてお伺いしました。

学生時代は主に2つのことに力を入れていました。1つは、大いに学んだことです。専攻の社会学にとどまらず、さまざまな分野の授業を受けていました。特に人間の発達に興味があり、教養学部に所属しながら教育学部のゼミにも参加しました。そこで人間の成長や社会の進歩について学ぶとともに、自分自身も成長する経験ができたと感じています。
もう1つは、学生自治会の活動です。入学当時、クラス単位のつながりが薄かったことから、学生同士のつながりをつくりたいと思い、活動に携わりました。新入生歓迎の泊まり込みキャンプを運営したほか、クラスの一体感を生み出すため、新たにソフトボール大会を企画しました。結果として、ほぼすべてのクラスが参加する大きなイベントになりました。仲間と協力しながら課題に取り組み、形にしていく楽しさを実感した経験であり、「自分で自分を治める」という自治の大切さを学ぶ機会にもなりました。

■ご縁から政治の世界へ

大学卒業後は、社会で経験を積もうと、コンピュータ会社でSEとして働き始めました。当時は、自分が政治の道に進むとは思っていませんでした。しかし、父が蕨市議会議員を務めていたこともあり、地元の方々から「議員になってほしい」と強い要望をいただき、議員になることを決意しました。迷いもありましたが、「期待が強く寄せられたときに応えることが、自分自身の成長につながる」という思いに背中を押され、立候補しました。
蕨生まれ、蕨育ちだったこともあり、議員になってからは自分の街の課題に向き合い、議会で質問するなど精力的に活動しました。さまざまな立場や考えを持つ人と関わり、実際に物事を動かしていく中で、地方自治の大切さや面白さを実感するようになりました。
一方で、活動を続ける中で、自分が本当に良いと思う街づくりを実現するには、実行する権限を持つ市長になりたいという思いが芽生えました。そして、多くの方々の支えを受けて市長に就任しました。
市長になると、議員とは違う景色が見えるようになりました。大きな責任を伴う一方で、自分の決断によって市民の思いを形にし、実際の施策として実現できることに大きなやりがいを感じています。就任後には、議員時代に実現できなかった蕨駅へのエレベーター設置も実現することができ、市民の方々に喜んでいただきました。掲げたことを実現し、市政を身近に感じてもらえる。そのことに、市長としての大きなやりがいを感じています。

■「わが街」意識が、より良い街をつくる

蕨は日本で一番小さな市であり、人口密度は日本一です。そんな蕨の魅力は、歴史や文化を背景とした豊かなコミュニティや、人と人との温かいつながりがありながら、都心へのアクセスも良いという「温かさ」と「便利さ」を兼ね備えているところだと感じています。
私は、人と人とが顔の見える関係にあることが、街づくりの原点だと考えています。防災などさまざまな課題がある中でも、地域に知っている人がいることは大きな力になります。だからこそ、人との触れ合いを大切にし、市民の皆さんに街への愛着を持ってもらいたいと考えています。
私自身もさまざまなイベントに参加し、市民に身近に感じてもらえる市長であることを心がけています。市民意識調査でも「まちへの愛着」が約8割となっています。良い街をつくるうえで大切なのは、住んでいる人が「ここは自分の街だ」と思えることです。そのためにも、市政を身近に感じてもらい、市民の声に耳を傾けることを何より大切にしています。

■人のつながりを、街づくりの力に

蕨には37の町会があり、行政だけでなく、町会の方々にも協力していただきながら、さまざまな課題の解決に取り組んでいます。多国籍化に伴う課題や犯罪対策においても、蕨のつながりの強さを活かし、地域全体で課題をカバーしてきました。犯罪件数は20年前と比べて約5分の1にまで減少しています。もちろん、行政としての対策も欠かせません。街なか防犯カメラの設置を進めたり、家庭用防犯カメラへの補助金を設けたりするなど、不安を少しでも取り除くための取り組みも進めています。
また、教育や子育て、環境整備にも力を入れています。国に先駆け、市独自での35人学級の導入や体育館へのエアコン設置、ALTの全校配置、GTECによる英語4技能テストなど、子どもたちが生き生きと学べる環境を整えてきました。SNSとの付き合い方を家庭や地域で考える「健やかメディア宣言」や、保育園の整備による待機児童ゼロ、学童保育の拡充にも取り組んでいます。さらに、水道管(基幹管路)の耐震化率は全国平均が44.6%にとどまる中、99.4%に達するなど、目に見えにくい社会インフラや防災対策も着実に進めています。そして、未来への飛躍に向けた蕨駅西口再開発事業が、いよいよ来年の完成予定となっています。
こうした取り組みで大切なのは、市民に「関わってもらう」ことです。行政が一方的に課題を解決するのではなく、自分たちの街のこととして当事者意識を持って関わる人が増えるほど、課題を解決する力は大きくなります。市民のつながりが豊かな蕨だからこそ、その力を活かしながら、市民とともに住みよい街をつくっていきたいです。

■大学生へのメッセージ

大学時代に学んだことや、学生自治会で仲間と課題解決に取り組んだ経験は、当時は将来を意識したものではありませんでしたが、振り返ってみると今の仕事にもつながっています。社会では、さまざまな人がいる中で、より良い方向を決め、実行し、振り返りながら前に進んでいくことが大切です。その原点は、学生時代の経験にもあると思います。
私の好きな言葉に「無駄な経験はない」というものがあります。成功したことも失敗したことも、いつ、どこで生きるかは分かりません。だからこそ、学生の皆さんには、すぐに結果が出るかどうかを気にしすぎず、さまざまなことに前向きにチャレンジしてほしいと思います。

学生新聞オンライン2026年8月6日取材 津田塾大学4年 山下さくら

津田塾大学4年 山下さくら/上智大学2年 石川仁菜/獨協大学2年 増田乙花/京都芸術大学1年 猪本玲菜/国際基督教大学4年 若生真衣

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