株式会社ドトールコーヒー代表取締役社長 星野正則

コーヒーだけを売っているのではない。「ホッとする、幸せだな」という感情を生み出すのが仕事です

株式会社ドトールコーヒー代表取締役社長 星野正則(ほしの まさのり)

■プロフィール

 1959年新潟県生まれ。大学卒業後、ドトールコーヒーに入社。一般卸営業職を経て、店舗開発業務に従事。2000年6月に取締役に就任し、2017年4月より現職。2008年5月よりドトール・日レスホールディングスの代表取締役社長も兼務。

セルフコーヒーショップのパイオニアとして業界を牽引し続けるドトールコーヒー。コーヒー豆の生産から卸、ショップ展開まで一貫して行う日本最大級のコーヒーチェーンの星野社長に、仕事の意義や学生に求めるものを伺った。

■ドトールコーヒーに就職したきっかけを教えてください

 大学時代は、褒められた学生ではなかったんですよ(笑)。少林寺拳法の部活や、自立のためのアルバイトばかりに精を出して、なんと5年も通いました。
 就職の内定もギリギリまで決まらず、教授から「何か好きなことはないのか」と聞かれ、「そういえば喫茶店に行くことが好きだから、コーヒー業界に就職しよう」と。
 ドトールコーヒーに電話して、会社に行ってみたらいきなり社長面接でした。
 私の成績表を見た鳥羽社長(当時)が、ひと言「勉強嫌いだったんだね」と(笑)。
 「なんで大学に行ったのか」と社長に聞かれたので「、友達をつくろうと思いました」と答えたら、「素晴らしい!一緒に頑張っていこう」と突然握手されました。
 私のことをわかってくれた気がして、こういう社長と仕事がしたいと思いましたね。

■就職した頃の思い出をお聞かせください

 新人時代の私の仕事は、ドトールのお店を全国に増やすことでした。フランチャイズのオーナーになってくれる人を探し、事業計画を練り、出店をフォローします。
 あるオーナーに出店してもらって店をオープンさせたのですが、業績不振の状況が続きました。
 私も何かできることはないかと模索し、人件費を浮かすために土日はそのお店で働いたりして協力しましたが、どうにもなりませんでした。
 とうとうオーナーさんから「出店時の6000万円の借金も返せないし、手の打ちようがない」と言われてしまった。
 そこで、鳥羽社長に相談したところ、「オーナーから店を買い取って、閉店しよう」と言うのです。
 オーナーの借金は無くなりますが、会社の損失につながるわけですから、この回答はとても意外でした。
 でも鳥羽社長は「家族、オーナー、お客様…。ドトールコーヒーに関わる人を、不幸にしてはいけない」と言ったんです。
 誰かの不幸の上に成り立つ商売は間違いです。そして、もしも間違いを犯してしまったら、謝り、自分たちで正していくこと。そんなことを教えてもらいました。それ以降は、出店もより慎重に、熟考するようになりましたね。

■どのような点にコーヒー業界で働く意義を感じますか

 コーヒーが飲みたければ、家庭でも飲めます。でもお客様はドトールコーヒーのお店に来てくれる。これは、単にコーヒーを飲みに来ているだけではなく、ホッと安心できる場を求めて来られているのだと思います。
 外食産業は、「食べる」ことで空腹を満たす時代から、コミュニケーションの場、憩いの場としての要素が大きくなってきています。
 ですから、私は「外食産業は幸福創造業」だと思っているんです。「美味しい」だけでなく、「幸せだな」という感情をつくる仕事です。
 人が求めているものは幸せです。それを提供できる私たちも幸せ。これが外食産業の醍醐味だと思うんです。
 創業者の言葉は、「ドトールコーヒーに関わる人全員を、幸せにしなくてはいけない」と言いかえることができるかもしれませんね。
 だからこそ、お客様の目線に立つことができる人と一緒に、会社を育てていきたいと思っています。
 礼儀正しく、身だしなみが整い、謙虚で誠実な学生は多いです。でも、これは当たり前のこと。相手(お客様)が何を考えているのか、何を求めているのかを理解できる人。お客様と幸せを共有できる人を求めています。

■大学生たちへのメッセージをお願いします

 学生時代はとにかく勉強してください!勉強といっても、大学の授業や資格の勉強だけではありません。本当の「知」に触れてほしい。
 本を読んだり、音楽を聴いたり、英語の勉強もいいですね。人生の幅が広がります。少しでも興味を持ったことにはチャレンジして、自分の好きなことを見つけてほしいです。学ぶ楽しさを知った人は、社会人になっても強いです。
 社会にでると、理不尽なことがたくさんあるし、時間の制約もできる。いまある自由な時間を存分に活かして、大学生だからこその楽しみを謳歌してほしい。そうすることで、自分だけの唯一無二の感性が磨かれるのだと思います。

学生新聞2020年4月号 立正大学2年 後藤秀貴

日本大学1年 酒井夏輝 / 文教大学1年 北島麗音 / 早稲田大学2年 伊豫隅春乃 / 立正大学2年 後藤秀貴

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