株式会社ZMP 代表取締役社長 谷口 恒

自動運転やロボティクスを通じて、日本社会に貢献を

株式会社ZMP 代表取締役社長 谷口 恒(たにぐち ひさし)

■プロフィール
2001年にZMPを創業。家庭向け二足歩行ロボットや音楽ロボット開発・販売を手掛け、2008年から自動車分野へ進出。メーカーや研究機関向けに自律走行車両の提供を行う。創業理念(Mission)は、楽しく便利な社会を創る。
現在、ロボットを社会インフラにするというVisionを掲げ、ZMPの各種製品やサービスが活躍する、Smart City、Smart Airport、Smart Hospital化に向けた、RoboTown®戦略を進めている。2019年 3月 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了、美術博士取得。

技術者としてキャリアを積んできた後、起業家として自動運転技術やロボット事業に挑戦している株式会社ZMP代表取締役社長の谷口恒氏。商社での営業経験を通じて培った広い視野と、技術で社会に貢献するという強い信念が、ZMPの成長を支えている。社会全体で深刻化する人手不足を解消し、より豊かで便利な未来を目指す谷口社長にお話を伺った。

学生時代、私は様々なバイトを経験しました。ゴルフ場のキャディから始まり、工場のライン作業や家庭教師、カラオケ道場での勤務など、多岐にわたる職種に挑戦しました。大学卒業後、私は地元の兵庫県姫路市に戻る予定でした。実家がお寺だったこともあり、父親から「お寺を継ぎながら働いてもいい」と言われていたのです。しかし、就職活動を進める中で、制御機器メーカーに出会い、結局、横須賀に転勤することになりました。これは、私にとって予定外の展開でしたが、技術者として働く中で、機械と電気を融合させるメカトロニクスの分野に深く関わることができました。特に、アンチロックブレーキシステムの開発に携わり、大型トラックなどの特殊な車両に技術を提供する仕事は刺激的でした。

■常に先を見据えて行動する

技術者としてのキャリアを積み重ねる中で、私は「もっと広い視野で仕事をしたい」という思いを抱くようになりました。エンジニアは、製品を設計・開発することが主な業務ですが、私自身は人ともっと直接的に関わり、技術を通じて社会にどう影響を与えるかを考えたいと思うようになったのです。そのため、技術系の商社に転職し、そこで営業のスキルを学びました。営業は、単に物を売るだけでなく、顧客との信頼関係を築き、技術をどのように価値として提供するかを考える仕事です。この経験は、私にとって非常に大きな転機となりました。商社での経験を通じて、私はビジネス全体を見渡す力を身につけ、次第に「自分の会社を持ちたい」という思いが強くなりました。
そして、インターネットバブルが訪れた時期に、広告代理店の知り合いとともにインターネット関連の会社を立ち上げました。ウェブサイトの制作やコンテンツ販売の運用を手がける中で、ブランディングやマーケティングの重要性を学び、さらに広い視野でビジネスを展開していくことの面白さを実感しました。しかし、インターネットバブルが崩壊すると、私は次のステップを模索することになりました。その時、ロボット技術に目を向けたのです。日本の技術力を世界に発信する機会があると感じ、ロボット関連の事業に乗り出しました。今では、自動運転技術やスマートシティの構築を通じて、社会全体をインフラの面から支える仕事に携わっています。

■社会問題解決を目指して

ZMPの事業と私たちの理念は、常に「ロボットを通じて社会に貢献する」という強い信念に根ざしています。私がこの会社を立ち上げた当初から抱いていたのは、自動運転やロボティクスの技術を活かして、私たちの暮らしをより豊かに、そしてより便利にしたいという思いでした。
その中で、ZMPの事業には三つの大きな柱があります。
まず一つ目が、「インダストリアルモビリティ」つまり産業向けの自動運転技術です。私たちが目指しているのは、空港の車両や清掃車といった、特定の作業を担う車両を無人で運行させることです。この技術は、今の時代の課題である「人手不足」の解決策として非常に有効だと考えています。実際、空港や大規模な施設では既にこの技術が導入され、作業効率を飛躍的に向上させる結果を出しています。ZMPの自動運転技術が現実の課題を解決し、実際の現場で役立っている姿を見ると、私の中には強い達成感が生まれます。
次に、私たちが大切にしているのが「ライフモビリティ」という分野です。これは、生活圏における自動運転技術の活用で、私たちの日常生活をサポートするロボットの開発です。例えば、買い物の手伝いや介護のサポートをするロボットが、日常の移動手段として利用される未来を想像しています。この技術が実現することで、高齢化が進む日本の社会に大きなインパクトを与え、より豊かで便利な生活を提供できると確信しています。
そして、三つ目が「ROBO-HIⓇ(ロボハイ)」というプラットフォームです。これは、私たちが開発した自動運転車両やロボットだけでなく世界中のロボットをクラウドから一元管理するシステムであり、まさに「マルチロボOS」と呼べるものです。ロボハイを通じて、複数の車両やロボットの動きを効率的に制御できるため、スマートシティや病院のような現場で大きな力を発揮しています。私は、このシステムが都市全体をより効率的で持続可能なものに変える重要なツールになると信じています。
デザインにおいても、私たちは常に「人間中心のデザイン」を心がけています。特に、ロボットに「目」を持たせるというアイデアは、私自身非常にこだわりを持っています。ロボットに目があることで、人間は自然にロボットを信頼し、対話が生まれると感じています。私たちが作るロボットは、人と共に働き、人の生活をサポートする存在です。そのため、単なる機械としてではなく、もっと親しみやすい存在であるべきだと思うのです。
私はZMPの未来に対して、大きな希望を抱いています。自動運転技術やロボットが、社会の様々な分野で活躍する姿を想像すると、まだまだ挑戦することがたくさんあると感じます。私たちの技術が社会にどれだけ貢献できるか、そしてどれだけ多くの人々の生活を豊かにできるか。それが、私がこの仕事に情熱を注ぎ続ける理由です。

■大学生へのメッセージ

昔、日本は世界でトップを走り、特にアメリカが日本の成功を研究していました。しかし、日本が停滞する中、他国が成長しました。今こそ、若い世代には「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の再来を目指して欲しいと思います。そのためには、技術だけでなく、アートやクリエイティブな視点を持つことが重要です。問題解決やデザインにも創造力が必要であり、それが次世代の日本を再び世界のトップへ導く力になると信じています。

学生新聞オンライン2024年10月11日取材 中央大学3年 前田蓮峰

国際基督教大学2年 丸山実友 / 中央大学3年 前田蓮峰

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