モロゾフ株式会社 代表取締役社長 山口信二

思考と挑戦で未来を築くブランド価値の本質

モロゾフ株式会社 代表取締役社長 山口信二(やまぐちしんじ)

■プロフィール
1981年入社。マーケティング本部長、営業本部長を歴任し、2011年代表取締役社長就任。
ブランディング戦略を提唱し、バレンタインの多ブランド化、さらにモロゾフのプロダクトブランドとして「ガレット オ ブール」や「CUSTA」、「太陽のガレット」などを開発し、モロゾフの進化を指揮する。
日本チョコレート工業協同組合理事長、全日本菓子協会副会長、日本チョコレートココア協会副会長他。

百貨店や商業施設でよく目にするモロゾフ。日本で初めてバレンタイン文化を広めるなど、国内の洋菓子文化の発展を牽引してきた。チョコレートや焼き菓子など様々なお菓子を通じて多くの人々に「笑顔かがやく」時間を届け、今もなお、時代の変化とともに日々進化を続けているモロゾフの山口社長に同社の魅力や展望を伺った。

私のこれまでの歩みを振り返ると、一つひとつの出来事は決して一直線ではなく、むしろ偶然の積み重ねであったと感じています。ただ、その時々で真剣に向き合い、考え続けてきたことが、現在の経営にもつながっていると実感しています。

■学生時代に培った基礎力と人とのご縁

学生時代は、中学・高校でバレーボールに打ち込み、大学では茶道部に所属しておりました。大学の茶道部では週に二回の稽古に加え、禅寺に一週間泊まり込みで修行を行うなど、日常とは異なる環境に身を置く機会をいただきました。座禅や一汁一菜の生活を通して、自分と向き合う時間を持てたことは大きな経験です。
ただ、当時は茶道そのものが特別好きだったというよりも、仲間との関係性や、その場の空気を楽しんでいた側面も大きかったように思います。体育会系のメンバーも多く、どちらかといえば賑やかな集団でしたが、そうした環境の中で礼儀や作法に触れたことは、後の社会人生活において確実に活きています。
また、アルバイトではお中元やお歳暮の配送業務に携わっていました。繁忙期には体力的にも厳しく、一日に百件以上も配送を行う日々でしたが、責任感や継続力を養うことができました。決められた仕事をやり切ること、そしてその積み重ねが成果につながるという感覚は、この時期に身についたものだと思います。
茶道を通じて得た学びの中でも、特に印象に残っているのが「相手を思いやる姿勢」です。何かしら形式があるものの裏には必ず意味があり、その根底には相手への配慮があります。この考え方は、ビジネスにおける人との関わり方にも通じるものであり、現在に至るまで大切にしている価値観の一つです。また、当時のご縁が思いがけない形で仕事につながることもあり、人とのつながりの重要性を改めて実感しています。

■偶然に始まったキャリアと激動の時代

私が現在の会社に入社したきっかけも、非常に偶然でした。知人をきっかけにモロゾフを知り、面接時にいただいたチーズケーキの美味しさや、そこで出会った人たちの雰囲気に惹かれ、入社を決意いたしました。もともと別業界も志望しておりましたが、最終的には「人」と「商品」に魅力を感じたことが決め手となりました。
1981年に入社して以降、バブル期の成長、崩壊、さらに阪神・淡路大震災といった激動の時代を経験しました。特にバブル崩壊後は、百貨店業界全体が縮小傾向に入り、当社においても売上やブランド価値の低下を強く実感する局面が続きました。
そうした状況の中で、「この会社をどうすれば良くできるのか」という問いを、常に自分に投げかけ続けたのです。役職に関係なく、自分なりに経営を考え、仮説を立てていましたね。30代の頃からは、自分であればどのような戦略を取るか、そのために何をすべきかを具体的に思考し続けてきました。この積み重ねが、後の意思決定の土台になっていると感じています。

■ボトムアップ経営とブランド戦略

組織の中で新しいことを実現するためには、アイデアを持つだけでは不十分です。重要なのは、それをどのように実行に移すかです。私はこれまで、組織内のキーマンを見極め、その方々を巻き込みながら企画を形にしてきました。キーマンを動かすコツは、自分のアイデアであっても、成果をその人の手柄にすることです。結果、自分のやりたいことは実現出来ます。常に相手の「利」を考えて行動すれば、人は動いてくれます。
現在は、私自身の考えを組織に共有し、現場がそれをさらに磨き上げていくという体制を重視しながら、社員がやりたい企画ができるように体制を整えることも意識しています。
ボトムアップによる提案とトップダウンによる意思決定が噛み合うことで、より強い組織が形成されると考えています。
事業面では、百貨店や駅ビル、直営店、カフェなどを中心に全国で約200店舗を展開し、さらに幅広い販売チャネルを持っています。加えて、複数ブランドの展開やコラボレーション商品を通じて、多様な顧客ニーズに対応してまいりました。
経営においては、「ブランド価値」「企業価値」「社会的価値」の三つを高めることを軸としています。単に売上や利益を追求するだけでなく、社会にとって必要とされる存在であるかどうかを常に意識しています。新たなブランドの立ち上げや商品開発も、この考え方に基づいて推進してきました。
さらに重要なことは、これら三つの価値をバランスよく高めていくことです。どれか一つに偏るのではなく、長期的な視点で持続可能な成長を実現することが企業としての責任だと考えています。そのためにも職場の声を取り入れながら柔軟に変化し続けることを大切にしています。

■大学生へのメッセージ

今の時代、変化が激しいからこそ、自ら考え、行動する力がより重要になってきています。
私が人材に求めているのは、「自ら考えて動けるかどうか」です。指示を待つのではなく、自分なりの仮説を持ち、複数の選択肢を提示できる人材は、組織にとって非常に価値があります。私はよく「方法は三つ考えなさい」と社内でも伝えていますが、それは多角的に物事を見る力を養うためでもあります。
学生と社会人の違いは、「アマチュアかプロか」という点にあります。社会に出れば、自分の能力を価値として提供し、その対価として報酬を得ることになります。そのためにも、今のうちから主体的に考え、行動する習慣を身につけていただきたいと思います。
どのような小さなことでも構いません。「自分ならどうするか」を常に問い続けてください。その積み重ねが、やがて大きな力となります。皆さんのこれからの挑戦を、心より期待しております。

学生新聞オンライン2026年3月18日 京都芸術大学1年 猪本玲菜

京都芸術大学1年 猪本玲菜/津田塾大学3年 山下さくら/東京家政大学2年 篠田陽菜乃/東京女子大学2年 浮田梨紗

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