一般社団法人日本エンジェル投資家協会 代表理事 / Power Angels 代表取締役 山本敏行
理解されなくても進み続けた“10年先を行く起業家”が歩む、エンジェル投資の道とは

一般社団法人日本エンジェル投資家協会 代表理事 / Power Angels 代表取締役 山本敏行(やまもととしゆき)
■プロフィール
昭和54年3月21日、大阪府寝屋川市生まれ。中央大学在学中の2000年、留学先のLAでEC studio(後にChatworkへ社名変更)を創業。
2012年に米国法人をシリコンバレーに設立し、5年間経営した後に帰国。
上場1年前にChatworkのCEOを弟に譲り、2019年東証グロースへ550億円超の時価総額で上場。
現在はエンジェル投資家コミュニティの「Power Angels」に注力している。
著書に「エンジェル投資家 実践バイブル」がある。
いくつもの事業の立ち上げに挑み、失敗を重ねながらも前進し続けた起業家、山本敏行さん。自己資本での経営からスタートアップ型へと舵を切り、事業を拡大。現在はエンジェル投資を通じて、資金と経験の両面から次世代の起業家を支援している。これまでの来歴や投資の可能性について紐解いた。
■若いうちから芽生えていた、自分の力で稼ぎたいという思い
約30年前、まだ出始めたばかりだったインターネットに可能性を感じ、高校生の段階で起業していました。学生時代の僕の頭の中は、ほぼビジネス一色だったと思います。ただ当時の感覚としては、「起業」というよりも「お金を稼ぐ」という意識のほうが強かったですね。ITの知識も十分ではなかったので、とにかく手探りでした。一晩中かけて10万人に営業メールを送ってみたり、とにかく売上を上げるためのトライアンドエラーを繰り返していました。
バイトが禁止されている進学校に通い、周囲にインターネットを知っている人もほとんどいない中で、月に20万円ほど稼いでいました。同級生からは理解されず、「変わったやつ」と思われていたと思います。ところが10年後の同窓会で、「お前はあの頃から違った」と言われました。時間が経って初めて、自分のやっていたことが理解される。その経験はとても印象的でした。
■10年先の時代を先取りするビジネスを
振り返ると、直感的に「これはやるべきだ」と思っても、周囲に理解されないことは何度もありました。以前は「自分が間違っているのではないか」と悩むこともありましたが、次第に「自分は5年、10年先のことをやっているだけだ。そのうち時代が追いついてくる」と考えるようになりました。そうした経験を積み重ねたことで、いまでは自分の直感に迷いなく従えるようになっています。
実家は大阪で老舗の音楽スタジオを営んでおり、父は僕にその会社を継いでほしいと考えていました。しかし、インターネットの可能性を強く信じていた僕は、その道を選ぶつもりはありませんでした。自分の力でインターネットビジネスをやっていきたいと考えていたのです。そのためには、大学卒業までに父を納得させるだけの結果を出す必要があると考え、自分なりのタイムリミットを設定しました。そして大学3年のときに一年休学し、ロサンゼルスに留学した2000年から、本格的に起業に取り組み始めました。
■エンジェル投資の環境を整え、日本経済を豊かにしたい
本格的に起業してからも、試行錯誤の連続でした。30以上の事業を立ち上げては失敗を繰り返し、その中で学びを積み重ねていきました。ロサンゼルスでの経験を通じて、チャットツールの有用性を強く実感していました。日本ではまだメールが全盛期だったタイミングの2011年、「メールの時代は終わりました」というメッセージとともにChatworkをリリースしました。
それまでの約15年間は、売上や利益を再投資する形で事業を拡大してきましたが、このやり方では人手も時間も足りないという限界を感じていました。そこで、世界に広がるサービスにするために、外部から資金を調達する、いわゆるスタートアップ型の経営に舵を切りました。
この経験から、同じ「経営」であっても、資金調達をして上場を目指すことによってまったく異なる戦い方があることを知りました。それまであまり関心のなかったエンジェル投資にも興味を持つようになり、これがPower Angels立ち上げのきっかけとなったのです。
Power Angelsでは、単に資金を提供するだけでなく、自身の起業経験をもとに実践的なアドバイスを行い、スタートアップの成功確率を高めることを重視しています。そのため、メンバーとなる投資家は、若手起業家に助言できる経営経験を持つ人に限定しています。
僕自身は、スタートアップと中小企業の両方を経験し、会社を上場させ、さらにシリコンバレーの現場も見てきました。また、様々な経験から、経営者間だけでなく、政治家や官僚とのネットワークも育んできました。そうした経験を活かし、さまざまな分野をつなぐ存在になれればと考えています。
■学生へのメッセージ
起業はとても面白いものです。学生という立場は、ある意味で「挑戦のゴールデンタイム」であり、社会や大人が応援してくれる貴重な時期でもあります。起業に対しては、「失敗したらどうしよう」という不安や周囲の反対もあると思います。しかし、そこで得られる経験や失敗は、必ず自分の糧になります。確実に自分を強くしてくれるものです。
たとえ起業しなくても、すべてを「自分事」として捉え、原因を自分に求める自責思考はとても重要です。この起業家マインドは、どの分野に進んでも役立ちます。さらに、1年間の休学や留学も強くおすすめします。新卒という選択肢を残しながら、時間をフルに使って挑戦できる貴重な機会です。その経験は、間違いなく人生の転機になるはずです。
学生新聞オンライン2026年3月18日取材 獨協大学1年 中津亜結梨

津田塾大学3年 山下さくら/獨協大学1年 中津亜結梨


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